といっても、是非今日はといって、何《ど》ういう事か大層|急《せ》いてお出でになりました、処が丁度弘行寺の裏林へ通り掛りますと、十四五人の狼藉者《ろうぜきもの》が出まして、得物/\を持って切り付けましたから、旦那はお手利《てきゝ》でございますから直《すぐ》に脇差を抜いて向うと、富五郎も元は武士で剣術も存じておりますから、二人で十四五人を相手に切り結んだけれども、幾ら旦那が御手練《ごしゅれん》でも向《むこう》は大勢《たいぜい》でございますから、仕方なく、富五郎が旦那にお怪我をさしてはならぬとやっと切り抜け駈け付けて来ました、直《すぐ》に村の若い衆《しゅ》も大勢《おおぜい》参りましたけれども、其の甲斐もなくもう間に合いませんで、誠に情ないことでございます」
花「じゃア富五郎さんが一緒に附いて行って弘行寺の裏林へ掛った処が十四五人狼藉者が出て取巻いたから、旦那も切結び、富五郎も切り合ったという処を誰も見た者はないので、富五郎が帰って其の事を話したのですね」
隅「左様でございます」
花「うん、富五郎という人は内におりますか」
隅「お母《っか》さん、今日は富五郎は何処《どこ》かへ使いに参り
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