がありはしまいか、よもや知れない事もあるまいが、何か訳のある事だろうと、お噂を致しておりましたが実に夢の様な心持でございましてねえ、それは貴方とは別段に中が好《よ》くってねえ、旦那が毎《いつ》も疳癪《かんしゃく》を起しておいでなさる時にも、関取がおいでなさいますと、直《すぐ》に御機嫌が直って笑い顔をなさる、こうやって関取が来ても旦那様がお達者でいらしったら嘸お喜びだと存じまして、私は旦那の笑顔が目に付きます」
母「これ泣かないが宜《え》え、そう泣かば病に障るからというのに聞かなえで、彼《あ》の様に泣いてばいいるから、汝《われ》が泣くから己《おら》がも共に悲しくなる、泣いたって生返《いきけえ》る訳エなえから諦めろというだ、ねえ関取」
花「ヘエ、御愁傷の処は御尤でございますが、お隅さん、旦那をば何者が殺したという処の手掛《てがゝり》は些《ちっ》とはございますか」
隅「もう関取の処へ早く行《ゆ》き度《た》いというのが、御用があって二日ばかり遅くなりましたから、是から富五郎を供に連れて関取にお目に掛りに参ると仰しゃるから、今日は大分《だいぶ》遅いから明日《あす》になすったら好《よ》かろう
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