却《かえ》って病に負けるから我慢して居なさい、アヽ痛、これ/\按摩待て、少し待て、アヽ痛い、成程|此奴《こいつ》は何うもひどい下手だナ、汝《てまえ》は、エヽ骨の上などを揉む奴が有るものか、少しは考えて遣《や》れ、酷《ひど》く痛いワ、アヽ痛い堪《たま》らなく痛かった」
按摩「ヘエお痛みでござりますか、痛いと仰しゃるがまだ/\中々|斯《こ》んな事ではございませんからナ」
新「何を、こんな事でないとは、是より痛くっては堪らん、筋骨に響く程痛かった」
按摩「どうして貴方、まだ手の先で揉むのでございますから、痛いと云ってもたかが知れておりますが、貴方のお脇差でこの左の肩から乳の処まで斯《こ》う斬下げられました時の苦しみはこんな事では有りませんからナ」
新「エ、ナニ」
と振返って見ると、先年手打にした盲人《もうじん》宗悦が、骨と皮|許《ばか》りに痩せた手を膝にして、恨めしそうに見えぬ眼を斑《まだら》に開いて、斯う乗出した時は、深見新左衞門は酒の酔《えい》も醒《さ》め、ゾッと総毛だって、怖い紛れに側にあった一刀をとって、
新「己《おの》れ参ったか」
と力に任《まか》して斬りつけると、
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