おだてるそゝのかす」
 富「只今帰りました」
 という。処が富五郎ばかり帰ったから恟《びっく》りして、
 隅「おや富さんお帰りかい何《ど》うかおしかえ」
 富「ヘエもう騒動が出来ました、あの弘行寺の裏林へ掛ったら悪漢《わるもの》が十四五人ででで出まして、二人とも懐中の金を出せ身ぐるみ脱いで置いて行《ゆ》けと申しましたから、驚いて旦那に怪我をさせまいと思いまして、松の木を小楯《こだて》に取りまして、不埓至極な奴だ、旦那を何《なん》と心得る、羽生村の名主様であるぞ、粗相をすると許さんぞというと、大勢で得物《えもの》/\を持って切って掛るから、手前も大勢を相手に切り結び、旦那も刀を抜いて切り結びまして、二人で大勢を相手にチョン/\切結んでおりましたが、何分多勢に無勢旦那に怪我があってはならぬと思って、やっと一方を切り抜けて参りました、此の通り顔を傷だらけにして…早くお若衆《わかいしゅ》早く/\」
 と誠しやかにせえ/\息を切っていいますから、お隅は驚いて、それ早く/\というので、村の百姓を頼んで手分《てわけ》をして、どろ/\[#「どろ/\」に傍点]押して参りましたが、もう間に合いは致しません
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