、斬った奴は疾《とう》に家《うち》へ帰って寝ている時分、百姓|衆《しゅ》が大勢行って見ると、情ない哉《かな》惣次郎は血に染って倒れておりますから、百姓衆も気の毒に思い、死骸を戸板に載せて引き取り、此の事を代官へ訴え、先《ま》ず検視も済み、仕方なく野辺送りも内葬の沙汰で法蔵寺へ葬りました。是程の騒ぎで村の者は出掛けて追剥《おいはぎ》の行方を詮議致し、又四方八方八州の手が廻ったが、殺した一角は横曾根村に枕を高く寝ておりまするので容易に知れません。惣次郎と兄弟分になった花車重吉という角力は法恩寺村にいて、場所を開こうという処へ此の騒ぎがあるのに、とんと悔《くや》みにも参りませんから、母も愚痴が出て
 母「あゝ家《うち》の心棒《しんぼう》がなくなれば然《そ》うしたもんか、情ないもの」
 と愚痴たら/″\。そうこうすると九月八日は三七日《みなのか》でござります、花車重吉が細長い風呂敷に包んだ物を提げて土間の処から這入って参りまして、
 花「はい御免なせい」
 多「いやお出でなさえまし」
 花[#「花」は底本では「多」]「誠に大分《だいぶ》御無沙汰致しました」
 多「家《うち》でもまア何《ど》うし
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