》で下手でも安田一角という者は、剣術の先生で弟子も持っているから、丁度お隅に惚れているのを幸い、一角を*おいやって惣次郎を殺し、惣次郎の歿《な》い後《のち》にお隅を無理に口説いて江戸へ連れて行って女房にしようという企《たくみ》を考え、やま[#「やま」に傍点]で嚇《おど》して上手に見えるが田舎廻りの剣術遣だから、安田一角が惣次郎より腕が鈍くて、若《も》し惣次郎が一角を殺すような事になれば、此の企は空しくなるというので、惣次郎が常に帯《さ》して出ます脇差の鞘を払って、其の中へ松脂《まつやに》を詰めて止めを致して置きました、実に悪い奴でございます。惣次郎は神ならぬ身の、左様な企を存じませんから富五郎を連れて、彼《か》の脇差を帯して家を出て、丁度弘行寺の裏林へ掛りますと、富五郎がこそ/\匐《は》って行《ゆ》くようですから、なぜかと思って後《うしろ》を振り返える、とたんに出たのは安田一角、面部を深く包み、端折《はしょり》を高く取って重ね厚《あつ》の新刀を引き抜き、力に任せてプスーリ一刀《いっとう》あびせ掛けましたから、惣次郎もひらりと身を転じて、脇差の柄に手を掛け抜こうとすると、松脂をつぎ込んで
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