》にも心外で、手前は浪人でも土民《どみん》なぞにへえつくする事はない、残念に心得ているが、打明話を致すが、江戸に親類どもゝある身の上、江戸へ帰るにも何か土産がないが、実は今まで道楽をして親類でも採上《とりあ》げませんから、貴方の内弟子になってお側で剣道を教えて頂いて、免許目録を貰って帰ると、親類でも今まで放蕩をしても田舎へ行って、是々いう先生の弟子になってと書付《かきつけ》を持って帰れば、それが価値《ねうち》になって何処《どこ》へでも養子に行かれる、処が、御門人にといっても、月々の物を差上げる事も出来ません身の上でございますが、それを承知で貴方の弟子に取って下さるなれば、私《わたくし》は弟子入の目録代りに、御意《ぎょい》に適《かな》ったお隅を、御新造に、長熨斗《ながのし》を付けて持って来ましょう」

        六十三

 安田「是は面白いぞ、惣次郎という主《ぬし》のある者をどうして持って来られます」
 富「惣次郎が有ってはいけませんが、惣次郎を一《ひ》ト刀《かたな》に斬って下さい」
 安「黙れ、馬鹿をいうな、帰れ、帰れ、汝《われ》は惣次郎と同意して手前の気を引きに来たな、うゝん帰
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