からナ、左様なら御機嫌よろしゅう」
 と僅《わずか》の療治代を貰って帰りました。すると奥方は鍼を致した鳩尾の所が段々痛み出し、遂には爛《ただ》れて鍼を打った口からジク/\と水が出るようで、猶更《なおさら》苦しみが増します。

        七

 新左衞門様は立腹して、
 新「どうも怪《け》しからん鍼医だ、鍼を打ってその穴から水が出るなんという事は無い訳で、堀抜井戸《ほりぬきいど》じゃア有るまいし、痴呆《たわけ》た話だ、全体|何《ど》う云うものかあれ限《ぎ》り来ませんナ」
 勘「奥方がもう来ないで宜《よ》いと仰しゃいましたから」
 新「間《ま》が悪いから来ないに違いない、不埓至極な奴だ、今夜でも見たら呼べ」
 と云われたから待って居りましたが、それぎり鍼医は参りません。すると十二月の二十日の夜《よ》に、ピイー/\、と戸外《おもて》を通ります。
 新「アヽあれ/\笛が聞える、あれを呼べ、勘藏呼んで来い」
 勘「ハイ」
 と駈出して按摩の手を取って連れて来て見ると、前の按摩とは違い、年をとって痩《やせ》こけた按摩。
 新「何《なん》だこれじゃア有るまい、勘藏違って居《お》るぞ」
 按摩「
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