い事に名主の瓜畑だから八釜《やかま》しく、庭へ引かれ、麻縄で縛られますと、廃《よ》せばよいに名主惣次郎は情深い人だから縁側へ煙草盆を持ち出して参って、
 惣「此奴《こいつ》かノ真桑瓜を食ったのは」
 男「ヘエ此の野郎で、草むしりに出ておりますと、瓜畑の中からにょこり[#「にょこり」に傍点]と起《た》ちアがったから、何するといったら厳しいお暑さなんてこきアがって、誰《たれ》もいやすめえと思って、瓜の皮があるから盗んだんべえと撲《ぶ》つと懐からも袂からも瓜が出たゞ何処《どこ》の者か江戸らしい言葉だ」
 惣「お前が真桑瓜を盗んだか」

        六十

 富「ヘエ/\恥入りました事で、手前|主名《しゅめい》は明《あか》し兼ねまするが、胡乱《うろん》と思召《おぼしめ》すなれば主名も申し上げまするが、手前事は元千百五十石を取った天下の旗下《はたもと》の用人役をした山倉富右衞門の忰《せがれ》富五郎と申す者|主家《しゅか》改易になり、常陸に知己《しるべ》がある為是へ金才覚に参って見るに、先方は行方知れず、余儀なく、旅費を遣い果してより、実は食事も致しませんで、空腹の余り悪い事とは知りながら二つ
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