五個《いつつ》ばかり喫《た》べ、それで往《い》けば宜しいのに、先へ行って腹が空ってはならんから二つ三つ用意に持って行こうと、右袂《こちら》へ二つ左袂《こちら》へ三つ懐から背中へ突込《つっこ》んだり何かして、盗んだなりこう起《た》つと、向《むこう》の畑の間から百姓がにょこり[#「にょこり」に傍点]と出た時は驚きました。
百姓「何《な》んだか、われは何んだか」
富「ヘエ、誠にどうも厳しい暑さでお暑い事で」
百「此の野郎め、まア生空《なまぞら》遣《つか》やアがって、此処《こゝ》を瓜の皮だらけにしやアがった、汝《われ》瓜食ったな」
富「どう致しまして、腹痛でございますから押えて少し屈《こゞ》んでおりましたが、暑気《しょき》に中《あた》っておりますので、先《せん》から瓜の皮はありますが、取りは致しませぬて」
百「此の野郎懐へ入れやアがって、生空つかやアがって、瓜盗んでお暑うございますなどと此の野郎」
ポカリ撲倒《はりたお》しますと、
富「あ痛《いた》たゝ」
と蹌《よろ》ける途端に袂《たもと》や懐から瓜が出る。其の内に又二三人百姓が出て来て、忽《たちま》ち山倉は名主へ引かれ、間が悪
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