十八十になる水鼻《みずっぱな》を半分クッ垂《たら》して腰の曲った水呑百姓が、年に免じて何卒《どうぞ》堪忍《かんにん》して下されと頭を下げれば堪忍する事も出来ようが、立派な角力取、天下に顔を売る者に安田一角が勘弁したとあれば力士に恐れて勘弁したと云われては、今井田流の表札に関わるから猶更勘弁は出来んからなあ」
 花「それは困りますねえ、それじゃア物に角が立ちます、先生《しぇんしぇい》私《わし》は天下の力士でも何《なん》でもないわ、まア長袖の身の上で、皆さんの贔屓を受けなければならん、裸体《はだか》で、お前さん取まわし一つでもってから大勢様の前に出て、まア勝つも負《まけ》るも時の運次第でごろ/\砂の中へ転がって着物を投《ほう》って貰い勝ったとか負けたとかいう処が愛敬じゃア、然《そ》うして見れば皆様《みなさん》の御贔屓を受けなければならん、貴方が勘弁して下されば、それ花車|彼奴《あいつ》は愛敬者じゃア、先生が勘弁|出来《でけ》ない処を花車を贔屓なればこそ勘弁したといえば、それで私は先生のお蔭で又売出します、然うじゃアございませんか、勘弁しておくんなさい」
 安「堪忍は出来ぬ」
 花「出来ぬで
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