してはなんねえと、気い付けられたんだが、こうなっては私や出先で済まねえ事だから関取頼むぞえ」
花「心配しねえでもいゝよ、私《わし》が請合った宜しい」
と落着払って花車、齢《とし》は二十八でありますが至って賢い男、大形《おおがた》の縮緬《ちりめん》の単衣《ひとえもの》の上に黒縮緬の羽織を着て大きな鎖付の烟草入《たばこいれ》を握り、頭は櫓落《やぐらおと》しという髪《あたま》、一体|角力取《すもうとり》の愛敬というものは大きい形《なり》で怖《こわ》らしい姿で太い声の中に、何《なん》となく一寸《ちょっと》愛敬のあるものでのさり/\と歩いて参りまして、
花「はい御免なさい、先生《しぇんしぇい》今日は」
安「何《なん》だ、誰だい」
花「はい法恩寺の場所に来ております花車重吉という弱い角力取で、何卒《どうぞ》お見知り置《おか》れて皆様御贔屓に願います」
安「はい左様か、私《わし》は相撲は元来嫌いで遂《つい》ぞ見に往った事も無いが、関取|何《なん》ぞ用でござるかい」
花「はい只今承りますれば、羽生村の旦那が、貴君方《あなたがた》に対して飛んだ不調法をしたと申す事だが、何分にもお聞済みがな
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