から、それよりは花車を他《ほか》へ招《よ》んで酒を飲ました方が宜しい、それに女連《おんなづれ》で雑沓《ざっとう》の中で間違でも有っては成らぬ、殊《こと》にお隅を連れて行くは心配でもあり役柄をも考えたから、大生郷の天神前の宇治の里という料理屋へ上《あが》り、此処《こゝ》の奥で一猪口《ひとちょこ》遣《や》っていると、間が悪い時は仕方のないもので、彼《か》のお隅にぞっこん惚れて口説いて弾《はじ》かれた、安田一角《やすだいっかく》という横曾根村の剣術家、自《みず》から道場を建てゝ近村《きんそん》の人達が稽古に参る、腕前は鈍くも田舎者を嚇《おど》かしている、見た処は強そうな、散髪を撫付《なでつ》けて、肩の幅が三尺もあり、腕などに毛が生えて筋骨|逞《たくま》しい男で、一寸《ちょっと》見れば名人らしく見える先生でございます。無反《むぞり》の小長《こなが》いのを帯《さ》し、襠高《まちだか》の袴《はかま》をだゞッ広《ぴろ》く穿き、大先生の様に思われますが、賭博打《ばくちうち》のお手伝でもしようという浪人者を二人連れて、宇治の里の下座敷で一口遣っていると、奥に惣次郎がお隅を連れて来ている事を聞くと、ぐッぐ
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