もいゝから帰《けえ》れたら早く帰《けえ》って来《こ》うというと胆《きも》いれてそんたら往くめえなどと、年寄ればハア然《そ》うお前《めえ》にまでいわれて邪魔になるかと思って早くおっ死度《ちにて》えなどと愚痴も出るものでのう」
五十五
惣次郎「イエ左様なれば早く帰って参ります、思わず言過ぎて何《ど》うも悪いことを申しまして今夜は早く帰って参ります、大《おお》きに余計な御心配を懸けまして誠に済みません」
母「然《そ》うなれば宜しい、機嫌を直して往《い》くがいいよ、これ/\多助《たすけ》や」
多「ハイ」
母「汝《われ》行くか」
多「ヘエ、関取が出るてえから行って見ようと思って」
母「汝口が苛《えら》いから人中へ入って詰らねえ口利いては旦那様の顔に障るから気イ付けて能く柔和《おとな》しく慎しんで往《い》てこうよ」
多「ヘエ、畏《かしこま》りました、私《わし》が行けば大丈夫《でいじょうぶ》だ、そんなら往って参《めえ》ります、左様なら」
と、惣次郎は是から水街道の麹屋に行って彼《か》のお隅を連れて、法恩寺村の場所に行こうと思ったが、今日は大《たい》した入りだという
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