を当《あて》る事だけネ教わって覚えたので、時々やって見た事がある、今も丸《たま》が込めて有る事を思い出したから、直《すぐ》に旦那の手箱の中《うち》から取出してね、思い切って遣《や》って見たんだけれども、好《い》い塩梅に近くで発《はな》しただけに狙いも狂わず行《や》って、お前に怪我さえ無ければ私はマア有難い斯《こ》んな嬉しい事は無いよ」
 新「何しろ何《ど》うせ此の事が露顕せずにはいねえ、甚藏を撲殺《ぶっころ》して仕舞ってお前《めえ》と己と一緒に成っていられる訳のものじゃアねえから、今のうち身を隠してえものだ」
 賤「アヽ私もね茲《こゝ》にいる気はさら/\無いから、形見分《かたみわけ》のお金も有るのだけれども、四十九日まで待ってはいられないから、少しは私の貯《たくわ》えも有るから、それを持って二人で直《すぐ》に逃げようじゃアないか」
 新「ウム、少しも早く今宵《こよい》の内に」
 というので、是から衣類や櫛《くし》笄《こうがい》貯えの金子までも一《ひ》ト風呂敷として跡を暗《くら》まし、明《あけ》近い頃に逐電して仕舞いました。また甚藏の死骸は絹川べりにありましたが、夜《よ》が明けて百姓が通
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