ます。
 新「兄い助けて呉れ/\」
 と喚《わめ》きますのを、
 甚「うぬ助けるものか、お賤のあまッちょも今|後《あと》からだ」
 と腰から出刄庖丁を取出して新吉の胸下《むなもと》を目懸けて突こうとすると、新吉は仰向に成って、
 新「己が悪かった堪忍して、兄い後生だから助けてよう」
 というも大きな声を出しては事が露顕しようと思いますから、小声で助けて呉んねえと呼ぶばかりでございます。すると何処《どこ》から飛んで来ましたかズドンと一発鉄砲の流丸《それだま》が、甚藏が今新吉を殺そうと出刃庖丁を振り翳《かざ》している胸元へ中《あた》りましたから、ばったり前へのめりましたが、片手に出刃庖丁を持ち、片手は土手の草に取つき、ずーと立上ったが爪立《つまだ》ってブル/\っと反身《そりみ》に成る途端にがら/\/\/\と口から血反吐《ちへど》を吐きながらドンと前へ倒れた時は、新吉も鉄砲の音に驚き呆気《あっけ》に取られて一向訳が分らないから、自分が[#「自分が」は底本では「身分が」]殺された心がしましてたゞ南無阿弥陀仏/\と申しましたが、暫くして漸《ようや》くに気が付き起上りまして四辺《あたり》を見廻し、
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