》や何か縄の様になってあるから、兄い此奴《こいつ》に吊下《ぶらさが》って行けば大丈夫《でえじょうぶ》だが己は行った事がねえからお前《めえ》行ってくんねえな」
 甚「此奴ア旨え事を考えやアがった、新吉の智慧《ちえ》じゃアねえ様だ、此奴ア旨え、柄杓は有るか」
 と手水鉢の柄杓を口に啣《くわ》えて、土手の甚藏が蔦蔓《つたかつら》に掴まって段々下りて行くと、ちょうど松柏の根方《ねがた》の匍《は》っている処に足掛りを拵《こしら》えて、段々と谷間《たにあい》へ下りまして、
 甚「アヽ斯《こ》うやって見ると高いナア、新吉ヤイ/\水は充分あらア」
 新「早くお前《めえ》飲んだら一杯持って来て呉んねえ」
 甚「手前《てめえ》下りやアな、持って行く訳にアいかねえ、ポタ/\柄杓が漏らア、カラ/\になっていたからナア、アヽ旨《うめ》え/\甘露だ、いゝ水だ、アヽ旨え、なに持って行くのは騒ぎだよ」
 新「後生だから、お願いだから少しでも手拭に浸《ひた》して持って来て呉んねえ咽喉が干《ひ》っ付きそうだから」
 甚「忌《いめ》えましい奴だな、待ちャア」
 と一杯|掬《すく》い上げて澪《こぼ》れない様に、平《たいら》に
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