拠の書付《かきつけ》でも貰って、たんとは上げられないが百両上げるから、百両で堅気に成ったら宜かろうと云うので、長く彼様《あん》な事をしていても甚藏さんも詰らねえじゃアないか、兄弟分の友誼《よしみ》で此の事はいわないと達引《たてひ》いて呉れるなら、生涯食える様に百両遣ろうというのだ、百両貰って堅気に成りねえ」
 甚「然うか、有難《ありがて》え、百両呉れゝば生涯お互《たげ》えに堅気に成りてえ、己も馬鹿は廃《や》めてえや」
 新「然う極《き》めてくんねえ」
 甚「じゃアまア金さえ持って来りゃア」
 新「今|茲《こゝ》にはねえ」
 甚「何をいうんだ馬鹿」
 新「マア人のいう事を聞きねえ、旦那が達者のうちお賤に己が死んだら食方《くいかた》に困るだろうから、死んでも食方の付く様にといって、実は根本《ねもと》の聖天山《しょうでんやま》の手水鉢《ちょうずばち》の根に金が埋めて有るから、それを以《もっ》てと言付けて有るのだ、えゝ二百両あると思いねえ、聖天山の左の手水鉢の側に二百両埋めて有るのだから、それを百両ずつ分けて江戸へ持って行って、お互に悪事は云わねえ云いますめえと約束して、堅気になって、親類にな
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