何《なん》でえといって喧嘩もする様な訳で、ヘエ有難う、カラもう何《ど》うも仕様がねえ、新吉、物がヘマに行ってな、此の通り人間が馬の腹掛を借りて着て居る様に成っちゃア意気地《いくじ》はねえ、馬の腹掛で寒さを凌《しの》ぐので、ヘエ有がとう、好《い》いお宅でげすねえ、私は初めて来たので」
賤「然《そ》うですか、なに好い家《うち》を拵《こしら》えて下すっても仕方がござりませんよ、斯《こ》う急に、旦那様がお逝去《かくれ》に成ろうとは思いませんでねえ、何時《いつ》までも此処《こゝ》に住んで居る了簡で居りましたが、旦那が亡なられては仕方が有りません。他《ほか》に行《ゆ》く処はなし、まア生れ故郷の江戸へ帰る様な事に成りますが、本当に夢の様な心持で、あゝ詰らないものだと考え出すと悲しく成ってね」
甚「そうでしょう、是は何《ど》うも実になア、新吉お賤さんは何《ど》の位《くれ》え力落だか知れやアしねえ、ナア、ヘエ有難う良《い》いお茶だねえ、此様《こん》な良い茶を村の奴に飲《のま》したって分らねえ、ヘエ有難う、お賤さん誠に申し兼ねた訳でげすがねえ、旦那が達者でいらっしゃれば黙って御無心申すのだが、此の通り
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