《くやみ》に上《あが》りましたが、旦那がお亡《なく》なりで嘸《さぞ》もう御愁傷でございましょう、ヘエ私《わっち》も世話に成った旦那で、平常《ふだん》優しくして甚藏や悪い事をすると村へ置かねえぞと、親切に意見をいって、喧《やかま》しい事は喧しいけれども、時々|小遣《こづけえ》もおくんなすってね、善《い》い人で、惜まれる人は早く死ぬと云うが、五十五じゃア定命《じょうみょう》とは云われねえ位《くれえ》で嘸お前さんもお力落しで、新吉|此処《こゝ》に居るのか手前《てめえ》、え、おい」
新「兄い此方《こちら》へお上りなさい」
甚「お賤さん、新吉がお前さんの処へ来て御厄介で、家《うち》は彼様《あん》な塩梅に成って此方《こちら》より外《ほか》に居る処が無《ね》えから、宜《い》い事にして、新吉が寝泊りをして居るというのだが、私《わっち》も新吉もお賤さんもお互に江戸子《えどっこ》で、妙なもので、村の者じゃア話しが合わねえから新吉と私は兄弟分《きょうでえぶん》になり、兄弟分の誼《よしみ》で、互《たげえ》に銭がねえといやア、ソレ持ってけというように腹の中をサックリ割った間柄、新吉の事を悪くいう奴が有ると、
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