甚「え、御免なせえ」
 と是から強請《ゆすり》になる処、一寸一息吐きまして。

        四十九

 土手の甚藏がお賤の宅へ参りましたのは、七日も過ぎましてから、ほとぼりの冷めた時分|行《ゆ》くのは巧《たくみ》の深い奴でございます。丁度九月十一日で、余程寒いから素肌へ馬の腹掛を巻付けましたから、太輪《ふとわ》に抱茗荷《だきみょうが》の紋が肩の処へ出て居ります、妙な姿《なり》を致して、
 甚「ヘエ御免なせえ、ヘエ今日《こんにち》は」
 賤「ハイ何方《どなた》え」
 甚「ヘエお賤さん御免なさえ、今日は」
 賤「おや、新吉さん土手の甚藏さんが来たよ」
 新「えゝ土手の甚藏」
 新吉は他人《ひと》が来ると火鉢の側に食客《いそうろう》の様な風をして居るが、人が帰って仕舞えば亭主振《ていしぶ》って居りますが、甚藏と聞くと慄《ぞ》っとする程で、心の中《うち》で驚きましたが、眼をパチ/\して火鉢の側に小さく成って居りますと、
 甚「誠に続いて好《い》い塩梅にお天気で」
 賤「はい、さア、まア一服お喫《あが》りなさいよ」
 甚「ヘエ御免なさえ、斯《こ》ういう始末でねえお賤さん、御本家へもお悔
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