「アイタ」
賤「アヽじれったいね」
と有合《ありあわ》せた小杉紙《こすぎがみ》を台処《だいどころ》で三帖《さんじょう》ばかり濡して来て、ピッタリと惣右衞門の顔へ当てがって暫く置いた。新吉はそれ程の悪党でもないからブル/\慄《ふる》えて居りまする。濡紙を取って呼吸を見るとパッタリ息は絶えた様子細引を取って見ると、咽喉頸《のどくび》に細引で縊《くゝ》りました痕《きず》が二本付いて居りますから、手の掌《ひら》で水を付けては頻《しき》りに揉療治を始めました。すると此の痕は少し消えた様な塩梅。
賤「さアもう大丈夫だ、新吉さんお前は今夜帰って、そうしてこれ/\にするのだから、明日《あした》お前悟られない様に度胸を据《す》えて来てお呉れよ」
といって新吉を帰して、すっぱり跡方の始末を付けて、直《すぐ》に自分は本家へ跣足《はだし》で駈込んで行《ゆ》きまして
賤「旦那様がむずかしくなりましたからお出《いで》なすって、まだ息は有りますが御様子が変ったから」
というと驚きまして、本家では悴《せがれ》惣二郎《そうじろう》から弟息子の惣吉《そうきち》にお内儀《かみ》さん村の年寄が駈けて来て見ると間に
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