、お出でったらお出でよ」
然《そ》うなると婦人の方が度胸の能《よ》いもので、新吉の手を引いて病間へ窃《そう》っと忍んで参りますと、惣右衞門は病気疲れでグッスリと寝入端《ねいりばな》でございます。ブル/\慄《ふる》えて居る新吉に構わず、細引《ほそびき》を取って向《むこう》の柱へ結び付け、惣右衞門の側へ来て寝息を窺《うか》がって、起るか起きぬか試《ためし》に小声で、
賤「旦那/\」
と二声《ふたこえ》三声《みこえ》呼んでみたが、グウ/″\と鼾《いびき》が途断《とぎ》れませんから、窃《そっ》と襟の間へ細引を挟み、また此方《こちら》へ綾《あや》に取って、お賤は新吉に眼くばせをするから、新吉ももう仕方がないと度胸を据《す》えて、細引を手に捲《ま》き付けて足を踏張《ふんば》る。お賤は枕を押えて、
賤「旦那え/\」
と云いながら、枕を引く途端、新吉は力に任《まか》して、
新「うーム」
と引くと仰向に寝たなり虚空を掴んで、
惣「ウーン」
賤「じれったいね新吉さん、グッと斯《こ》うお引きよ、もう一つお引きよ」
新「うむ」
と又引く途端新吉は滑って後《うしろ》の柱で頭をコツン。
新
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