旦那が癒《なお》ればまだ五十五だもの、其様《そんな》にお爺さんでもないから、達者になりゃア何時《いつ》迄も一緒に居て、ベン/\とおん爺《じい》の機嫌を取らなければならないが、新吉さん無理な事を頼む様だが、お前私を見捨てないと云う証拠を見せるならば今夜見せてお呉れ」
 新「何《ど》うしよう」
 賤「うちの旦那を殺してお呉れな」

        四十七

 新「殺せって其様《そん》な事は出来ねえ」
 賤「なぜ/\なぜ出来ないの」
 新「人情として出来ねえ、お前の執成《とりなし》が宜《い》いから、旦那は己が来ると、新吉|手前《てめえ》の様に親切な者はねえ、小遣《こづけえ》を持って行け、独身《ひとりみ》では困るだろう、此の帯は手前に遣《や》る着物も遣ると、仮令《たとえ》着古した物でも真に親切にして呉れて、旦那の顔を見ては何《ど》うしても殺せないよ」
 賤「殺せます、だから新吉さん、私はお前が可愛いと云う情《じょう》のない事を知って居るよ」
 新「情がないとは」
 賤「情が有るなら殺してお呉れよ」
 新[#「新」は底本では「賤」]「情が有るから殺せないのだ」
 賤「何を云うのだね、じれったいよ
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