労さした事も忘れやアしないから、私は何処《どこ》迄もお前に厭がられても縋《すが》りつく了簡だが、若《も》しお前に厭がられ、見捨てられると困るが、見捨てないというお前の証拠が見度《みた》いわ」
新「見捨てるも見捨てないも実はお前己だって身寄頼りもない身体、今は斯《こ》うなって誰も鼻撮《はなッつま》みで新吉と云うと他人は恐気《おぞけ》を振《ふる》って居るのだ、長く此処《こゝ》に居る気もないから、寧《いっ》そ土地を変えて常陸《ひたち》の方へでも行《ゆ》こうか、上州の方へ行こうか、それとも江戸へ帰《けえ》ろうかと思う事も有るが、お前が此処に居る中《うち》は何《ど》うしても離れる事は出来ないが、村中《むらじゅう》で憎まれてるから土手に待伏でもして居て向臑《むこうずね》でも引払《ひっぱら》われやアしねえかと心配でのう」
賤「私も一緒に行って仕舞い度《た》いが、今旦那が死掛って居るから、旦那が死んで仕舞えば行《い》かれるが、今|直《すぐ》には行けない、大きな声では云えないけれども、私は形見分《かたみわけ》の事も遺言状に書かして置いたし、お前の事も書かしてね、其処《そこ》は旨く行って居るけれども、
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