、旨く云ったってにこ/\顔付に見えるよ」
 新「何がにこ/\、冗談じゃアねえ、帰《けえ》らねえ、おい」
 累「はい、何卒《どうか》お前さん坊の始末を」
 新「始末も何もねえ、行《ゆ》かねえか」
 賤「其様《そんな》に云わずにお前お帰りよ、折角お迎いにお出《いで》なすったに誠にお気の毒様、大事な御亭主を引留めてね、さアお帰りよ、手を引かれてよ」
 新「何を云うのだ、帰《けえ》らねえか」
 と、さア癇癪に障ったから新吉は、突然《いきなり》利かない身体の女房お累の胸倉を取るが早いか、どんと突くと縁側から赤ん坊を抱いたなりコロ/\と転がり落ち、
 累「あゝ情ない、新吉さん、今夜帰って下さらんと此の児《こ》の始末が出来ません」
 と泥だらけの姿で這上るところを突飛ばすと仰向に倒れる、と構わずピタリと戸を閉《た》てゝ、下《おろ》し桟《ざん》をして仕舞ったから、表ではお累がワッと泣き倒れまする。此の時雨は愈々《いよ/\》烈《はげ》しくドウドッと降出します。
 新「エヽ気色が悪《わり》い、酒を出しねえ」
 賤「酒をったって私は困るよ、彼様《あん》な酷《ひど》いことをして、一寸帰ってお遣《や》りよ」
 
前へ 次へ
全520ページ中245ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング