新「うまく云ってやアがる、酒を出しねえ、冷たくっても宜《い》いや」
と燗冷《かんざま》しの酒を湯呑に八分目ばかりも酌《つ》いで飲み、
新「お前《めえ》も飲みねえ」
と互に飲んで床につくと、何《ど》ういう訳か其の晩は、お賤が枕を付けると、常になくすや/\能く寝ます。小川から雨の落込んで来る音がどう/\といいます。夜は深《ふ》けて一際《ひときわ》しんと致しますと、新吉は何うも寝付かれません。もう小一時《こいっとき》も経《た》ったかと思うと、二畳の部屋に寝て居りました馬方の作藏が魘《うなさ》れる声が、
作「ウーン、アア……」
新「忌《いめ》えましい奴だな、此畜生《こんちきしょう》、作藏/\おい作や、魘れて居るぜ、作藏、眼を覚まさねえかよ、作藏、夢を見て居るのだ」
作「エ、ウウ、ウンア」
新「忌えましい畜生だ、やい」
作「ヘエ、あゝ」
新「胆《きも》を潰さア、冗談じゃアねえ寝惚けるな、お賤が眼を覚さア」
作「寝惚けたのじゃアねえよ」
新「何うした」
作「己《おれ》が彼処《あすこ》に寝て居るとお前《めえ》、裏の方の竹を打付《ぶっつ》けた窓がある、彼処のお前雨戸を明けて、何
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