様になりますから、何卒《どうか》一度はお目に掛ってお礼を申し度《た》いと存じておりましても、何分にも子供はございますし、私《わたくし》も疾《と》うより不快でおりました故、御無沙汰を致しました」
 賤「誠にまア何うも降る中を夜中《やちゅう》にお出《いで》なすって、そんな事を仰しゃっては困りますねえ、新吉さんも江戸からのお馴染でございますから、私は此方《こっち》へ参っても馴染も無いもんでございますから、遊びにお出なすって下さいと、私が申しました、それから旦那も誠に贔屓《ひいき》にして、斯《こ》うやってお出なさるが、御亭主を引留めて遊ばしたと云えば、お前さんも心持が快《よ》くは有りますまいけれども、是に付いては種々《いろ/\》深い訳がある事でございますが、それは只今何も云いません、新吉さん折角迎いにお出でなすったからお帰りよ」
 新「帰《けえ》ることはねえ、おい、お前《めえ》冗談じゃアねえ、そんな形《なり》をして来て見っとも無い、亭主の恥を晒《さら》しに来る様なものだ、エ何《なん》だなア、おい、此の降る中を、お前なんだ逆上《のぼ》せて居るぜ、*たじれて居るなア」
*「のぼせて気が変になる。む
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