か》よう、と云ってハア蚊帳に縋り付くだ、それを無理に引張ったから、お前《めえ》生爪エ剥したゞ」
新「おい冗談じゃアねえ、折角の興が醒めらア、止せ、擽《くす》ぐるぞ」
作「擽ぐッちゃアいけねえ」
新「お喋りはよせ」
作「宜えやな」
新「冗談云うな、喋ると口を押《おせ》えるぞ」
作「よせ、口を押《おせ》えちゃアいけねえ、エ、おいお賤さん、其の爪を己《おれ》がに喰えって、誰が爪エ食う奴が有るもんかてえと、己が口へおッぺし込んだゞ、そりゃアまア宜えが、お前《めえ》薬鑵を」
新「冗談はよせ」
作「いゝや、よせよ擽ぐってえ」
新「寝ッちまいな/\」
と無理に欺《だま》して部屋へ連れて行って寝かしてしまいました。それから二人も寝る仕度になりますと、何《ど》う云う事か其の晩は酒の機嫌でお賤がすや/\能く寝ます。雨はどうどと車軸を流す様に降って来ました。彼是八ツ時でもあろうと云う時刻に、表の戸をトン/\。
「御免なさい/\」
新「お賤/\誰か表を叩くよ、能く寝るなア、お賤/\」
賤「あいよ、あゝ眠い、何《ど》うしたのか今夜の様に眠いと思った事はないよ」
新「誰か表を叩いて居る」
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