《でえじょうぶ》だ人子《ひとっこ》一人通らねえ土手下の一軒家田や畑で懸隔《かけへだ》って誰も通りゃアしねえから心配《しんぺえ》ねえよ」
 賤「いゝよ、私はまた作さんの酔ったのは可笑しいよ余念が無くって、お前さん慾の無い人だよ」
 作「慾が無《ね》い事《こた》アねえ、是で慾張って居るだが、何方《どっち》かというと足癖の悪《わり》い馬ア曳張《ひっぱ》って、下り坂を歩くより、兄いと二人で此処《こけ》え来て、斯う遣って酔って居れば好《い》いからね、先刻《さっき》は己《おら》ア酔《えい》が醒めたね」
 新「止せえ、先刻の話は止せよ」
 作「止せたってお賤さん、お前《めえ》マア新吉さんは可愛いゝ人だと思って居るから、首尾して、他人《ひと》にも知んねえように白《しら》ばっくれて寄せるけれども、新吉さんが此処《こけ》え来るってえ心配《しんぺえ》は是《こ》りア己《おれ》が魂消《たまげ》た事がある、今日ね」
 新「そんな詰らねえ事をいうな手前《てめえ》は酔うとお喋《しゃべ》りをしていけねえ」
 作「お喋りったって、一杯《いっぺえ》飲んで図に乗っていうのだ、エヽ、おい、それでねえ、マア一杯飲んで帰《けえ》っ
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