《くや》しいと見えて、
 累「エヽ新吉さん」
 と云うと、
 新「何をいやアがる」
 とツカ/\と立ち戻って来て、脇に掛って有った薬鑵《やかん》を取って沸湯《にえゆ》を口から掛けると、現在我が子與之助の顔へ掛ったから、子供は、
 子供「ヒー」
 と二声《ふたこえ》三声《みこえ》泣入ったのが此の世のなごり。
 累「鬼の様なるお前さん」
 新「何をいやアがるのだ」
 と持って居た薬鑵を投げると、双《もろ》に頭から肩へ沸湯を浴《あび》せたからお累は泣倒れる。新吉は構わずに作藏を連れて出て参りましたが、斯う憎くなると云うのは、仏説でいう悪因縁で、心から鬼は有りませんが、憎い/\と思って居る処から自然と斯様《かよう》な事になります。

        四十四

 新吉は蚊帳を持って出まして、是を金にして作藏と二人でお賤の宅へしけ込み、こっそり酒宴《さかもり》を致して居ります、其の内に段々と作藏が酔って来ると、馬方でございますから、野良で話を為《し》つけて居りますから、つい声が大きくなる。
 新「おい作、手前《てめえ》酔うと大きな声を出して困る、些《ちっ》と静かにしろ」
 作「静かにたって、大丈夫
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