事にしなよう、蚊帳を釣ったから、もういゝ、何も、もう其様《そん》な事を云うなえ、サ、行《ゆ》きましょう/\」
與「ヘエ参《めえ》りましょう、じゃアねえ、お累さん行《い》きますよ、旦那様が帰《けえ》るというから私《わし》も帰《けえ》るが、大事にしてお呉んなさえよ、よう、くよ/\思わなえが宜《え》え、エヽ何《ど》うも仕様がねえ、帰《けえ》りますよ」
三「ぐず/\云わずに先へ出なよ、出なったら出なよ、先へ出なてえに」
と兄が立ちに掛ると、利かない手を突いて漸《ようや》くに這出して、蚊帳を斯《こ》う捲《まく》ってお累が出まして、行《ゆ》きに掛る兄の裾《すそ》を押えたなり、声を振わして泣倒れまする。
三「其様《そんな》にお前泣いたり何かすると毒だよ、さア蚊帳の中へ這入りな、坊が泣くよ、さア泣いているから這入んな」
累「お兄様《あにいさま》只今まで重々の不孝を致しました、先立って済みませんが、迚《とて》も私は助かりません、何卒《どうぞ》御立腹でもございましょうがお母様《っかさま》に只《たっ》た一目お目に掛って、お詫をして死にとう存じますが、お母様にお出《いで》下さる様に貴方からお詫をなす
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