方《そっち》へ遣っちまっちゃア見る事が出来やあしねえ、本当にこんな金目の物を一時《いちどき》に取った程|楽《たのし》みな事《こた》アねえぜ、コウ余《あんま》り明る過ぎらア、行燈へ何か掛けねえ」
甚「何を掛けよう」
○「着物でも何《なん》でも宜《い》いから早く掛けやナ」
甚「着物だって着る物がありゃア何も心配しやアしねえ」
○「何《なん》でも薄ッ暗くなるようにその襤褸《ぼろ》を引掛《ひっか》けろ、何でも暗くせえなれば宜いや、オ、封印が附いてらア、エヽ面を出すな、手前《てめえ》は食客《いそうろう》だから主人《あるじ》が見てそれから後で見やアがれ」
甚「ウン、ナニ食客でも主人でも露顕《ろけん》をして縛られるのは同罪だよ」
○「そりゃア云わなくっても定《きま》ってるわ」
と云うので是から封印を切って、
○「何だか暗くって知れねえ」
甚「どれ見せや」
○「しッしッ」
五
甚「兄い何を考《かんげ》えてるんだ」
○「何《ど》うも妙だなア、中に油紙《あぶらッかみ》があるぜ」
甚「ナニ、油紙がある、そりゃア模様物や友禅《ゆうぜん》の染物が入《へえ》ってるから
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