き》へ顔を出すと蚊が舞って来て、鼻孔《はなめど》から這入《へえ》って口から飛出しそうな蚊で、アヽ何うもえれえ蚊だ、誰も居ねえようで」
三「然《そ》うか、じゃア這入って見よう」
と日暮方で薄暗いから土間の所から探り/\上って参ると、煎餅《せんべい》の様な薄っぺらの布団を一枚敷いて、其の上へ赤ん坊を抱いてゴロリと寝ております。蚊の多いに蚊帳《かや》もなし、蚊燻《かいぶ》しもなし、暗くって薩張《さっぱ》り分りません。
三「ハイ御免よ、おッ、此処《こゝ》に寝て居る、えゝお累/\私だよ兄だよ…三藏だよ」
累「は……はい」
四十
三「アヽ危ない、起きなくってもいゝよ、そうしていなよ、然《そ》うしてね、お前とは縁切《えんきり》に成って仕舞ったから、私が出這入りをする訳じゃアないが、縁は断《き》れても血筋は断れぬと云う譬《たと》えで何《なん》となく、お前の迷《まよい》から此様《こん》な難儀をする、何《ど》うかしてお前の迷が晴れて新吉と手が切れて家《うち》へ帰る様にしたいと思って居るから、もう一応お前の胸を聞きに来たので、新吉も居ない様子だから話に来た、エヽちょうど與助が供
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