胸が裂ける様だとか、癪《しゃく》という事を覚えて、只おろ/\泣いてばかりおります。兄貴は改って枕元へ来て、
三「段々村方の者の耳に這入り、今日は老母《としより》の耳にも這入って、捨てゝは置かれず、私《わし》が附いて居て名主様に済まない、殊《こと》に家《うち》の物を洗いざらい持出して質に置き、水街道の方で遊んで、家《うち》へ帰らずに、夜になればお賤の処へしけ込んでおり、お前が塩梅が悪くっても、子供が虫が発《おこ》っても薬一服呑ませる了簡《りょうけん》もない不人情な新吉、金を遣《や》れば手が切れるから手を切ってしまえ」
と兄が申しまする。所がお累は
「何《ど》うも相済みませんが、仮令《たとえ》親や兄弟に見捨てられても夫に附くが女の道、殊には子供も有りますから、お母様《っかさん》やお兄様《あにいさま》には不孝で有りますが、私は何うも新吉さんの事は思い断《き》られません」
と、ぴったり云い切ったから、
三「然《そ》うなれば兄妹《あにいもと》の縁を切るぞ」
と云渡して、纏《まと》めて三十両の金を出すと、新吉は幸い金が欲《ほし》いから、兄と縁を切って仕舞って、行通《ゆきかよ》いなし。新吉
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