、旦那様は家《うち》に来て居らっしゃるからと云って、無理に連れて来たので」
 惣「おや/\そうか、さア此方《こちら》へ」
 新「ヘエ初めまして、私《わたくし》はえゝ三藏の家《うち》へ養子に参りました新吉と申す不調法者で、何卒《どうぞ》一遍は旦那様にお目通りしたいと思いましたが、掛違いましてお目通りを致しません、今日《こんにち》は好《よ》い折柄《おりがら》お賤さんにお目に掛って出ましたが、ついお土産も持参致しませんで」
 惣「いゝえ、話には聞いたが、大層心掛の善い人だって、お前さん墓参りに能《よ》く行くってね」
 新「ヘエ身体が悪いので法蔵寺の和尚様が、無縁の墓へ香花を上げると、身体が丈夫になると云うから、初めは貶《けな》しましたが、それでも親切な勧めだと思って参りますが、妙なもので此の頃は其の功徳かして大きに丈夫に成りました」
 惣「うん成程|然《そ》うかえ、能く墓参《はかめえ》りをする、中々|温順《おとなし》やかな実銘《じつめい》な男だと云って、村でも評判が好《い》い」
 賤「本当に極くおとなしい人で、貸本屋に居て本を脊負ってくる時分にも、一寸《ちょっと》来ても、新吉さん手伝っておく
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