かりして居てね、身体が悪《わり》いから墓参りして、何《なん》でも無縁様の墓ア磨けば幻術が使えるとか何とか云ってね、願掛《がんがけ》えして」
 賤「おや気味の悪い、幻術使いかえ」
 作「今是から幻術使いになるべえと云うのだろう」
 賤「然うかえ妙な事が田舎には有るものだねえ、何かえ江戸の者で此方《こっち》へ来たのかえ」
 作「ヘエ上《かみ》の三藏さんてえ人の妹娘《いもとむすめ》お累てえが、お前《めえ》さん、新吉が此方へ来たので娘心に惚れたゞ、何《ど》うか聟に貰えてえって恋煩いして塩梅が悪くなって、兄様も母親様《おっかさま》も見兼ねて金出した恋聟よ」
 賤「然うかえ、新吉|様《さん》と、おや新吉さんというので思い出したが、見た訳だよ私がね櫓下に下地子《したじっこ》に成って紅葉屋《もみじや》に居る時分、彼《あ》の人は本石町の松田とか桝田とか云う貸本屋の家《うち》に奉公して居て、貸本を脊負《しょ》って来たから、私は年のいかない頃だけども、度々《たび/″\》見て知って居るよ、大層芸者|衆《しゅ》もヤレコレ云って可愛がって、そう/\中々愛敬者で、知って居るよ」
 作「アヽマア新吉さん/\、おい此方
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