江戸口で、お前《めえ》塩の甘たっけえのを、江戸では斯う云う旨《うめ》え物《もん》喰って居るからって、食物《くいもな》ア大変|八釜《やかま》しい、鰹節《かつぶし》などを山の様に掻いて、煮汁《にしる》を取って、後《あと》は勿体ないと云うのに打棄《うっちゃ》って仕まうだ、己淋しくねえように、行って三味線弾いては踊りを踊ったり何かするのだがね彼処《あすこ》は淋しい土手下で、余《あんま》り三味線弾いて騒ぐから、狸が浮れて腹太鼓を敲《たゝ》きやアがって夜が明けて戸を明けて見ると、三匹|位《ぐれ》え腹ア敲き破ってひっくり返《けえ》って居る」
新「嘘ばっかり」
作「本当だよ」
賤「一寸《ちょいと》/\作さん、何《なん》にも見る処《とこ》が無いから、もう行こう」
作「えゝ参《めえ》りましょう」
賤「一寸《ちょいと》作さん今話をして居た人は何所《どこ》の人」
作「彼《あ》れは村の新吉さんてえので」
賤「私は見たような人だよ」
作「見たかも知んねえ江戸者だよ」
賤「おや然《そ》うかい、一寸《ちょっと》気の利いたおつな人だね」
作「えゝ極《ごく》柔和《おとな》しい人で、墓参《はかめえ》りば
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