藍《あい》の万筋《まんすじ》の小袖に黒の唐繻子《とうじゅす》の帯で、上に葡萄鼠《ぶどうねずみ》に小さい一紋《ひとつもん》を付けました縮緬《ちりめん》の半纏羽織《はんてんばおり》を着まして、其の頃|流行《はや》った吾妻下駄を穿いて這入って来る。跡からついて参るのが馬方の作藏と申す男で、
 作「お賤《しず》さん是が累《かさね》の墓だ」
 賤「おやまア累の墓と云うと、名高いからもっと大きいと思ったら大層小さいね」
 作「小さいって、是が何《ど》うも何《なん》と二十六年祟ったからねえ、執念深《しゅうねんぶけ》え阿魔《あま》も有るもので、此の前《めえ》に助《すけ》と書いてあるが、是は何う云う訳か累の子だと云うが、子でねえてねえ、助と云うのは先代の與右衞門の子で、是が継母《まゝはゝ》に虐《いじ》められ川の中へ打流《ぶちなが》されたんだと云う、それが祟って累が出来たと云うが、何《なん》だか判然《はっきり》しねえが、村の者も墓参りに来れば、是が累の墓だと云って皆《みんな》線香の一本も上げるだ、それに願掛《がんがけ》が利くだねえ、亭主が道楽ぶって他の女に耽《はま》って家《うち》へ帰《けえ》らぬ時は、女房
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