新「冗談じゃアねえ、お前達《めえたち》は変だぜ」
駕「ヘエ何うも、此様《こん》な事は、今迄長く渡世《しょうべえ》しますが、今夜のような変な駕籠を担いだ事がねえ、行くと思って歩いても後《あと》へ帰《けえ》る様な心持がするがねえ」
新「戯けなさんな、包を出して」
と駕籠から出て包を脊負《しょ》い、
新「好《い》い塩梅に星が出たな」
駕「ヘエ奴蛇の目の傘はこゝにございます」
新「いゝやア、まア路《みち》を拾いながら跣足《はだし》でも何《なん》でも構わねえ行こう」
駕「低い下駄なれば飛々《とび/\》行《ゆ》かれましょう」
新「まアいゝや、さっ/\と行《い》きねえ」
駕「ヘエ左様なら」
新「仕様がねえな、何処だか些とも分りゃアしねえ」
と云いながら出かけて見ると、更《ふ》けましたから人の往来はございません。路を拾い/\参りますと、此方《こっち》の藪垣《やぶがき》の側に一人人が立って居りまして、新吉が行《ゆ》き過《すぎ》ると、
男「おい若《わけ》えの、其処《そこ》へ行《い》く若《わけ》えの」
新「ソリャ、此処《こゝ》は何《なん》でも何か出るに違《ちげ》えねえと思った、
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