れ」
 駕「ヘエ/\」
 と又ビショ/\担ぎ出した。新吉はまた中でトロ/\と眠気ざします。
 駕「アヽ恟《びっく》りすらア、棒組そう急いだって先が一寸《ちょっと》も見えねえ」
 新「あゝ大きな声だナア、もう来たのか若衆」
 駕「それが、些《ちっ》とも何処《どこ》だか分りませんので」
 新「何処だ」
 駕「何処だか少しも見当《みあて》が付きませんが、おい/\、先刻《さっき》左に見えた土手の燈火《あかり》が、此度《こんど》ア右手《こっち》に見える様になった、おや/\右の方の森が左になったが、そうすると突当りが山谷の燈火か」
 新「若衆、何《ど》うも変だぜ、跡へ帰って来たな」
 駕「帰《けえ》る気も何もねえが、何うも変でございます」
 新「戯《ふざ》けちゃア困るぜ冗談じゃアねえ、お前達《めえたち》は訝《おか》しいぜ」
 駕「旦那、お前さん何か腥《なまぐさ》い物を持っておいでなさりゃアしませんか、此処《こか》ア狐が出ますからねえ」
 新「腥い物|処《どころ》か仏の精進日だよ、しっかりしねえな、もう雨は上ったな」
 駕「ヘエ、上りました」
 新「下《おろ》しておくれよ」
 駕「何うもお気の毒で」
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