中で寝た様だ、何処《どこ》だか薩張《さっぱり》分らねえが何処だい」
 駕「何処だか些《ちっ》とも分りませんが、鼻を撮《つま》まれるも知れません、たゞ妙な事には、なア棒組、妙だなア、此方《こっち》の左《ひだ》り手に見える燈火《あかり》は何《ど》うしてもあれは吉原土手の何《なん》だ、茶屋の燈火に違《ちげ》えねえ、そうして見れば此方にこの森が見えるのは橋場の総泉寺馬場《そうせんじばゞ》の森だろう、して見ると此処《こゝ》は小塚ッ原かしらん」
 新「若衆/\妙な方へ担いで来たナ、吾妻橋を渡ってと話したじゃアねえか」
 駕「それは然《そ》う云うつもりで参《めえ》りましたが、ひとりでに此処へ来たので」
 新「吾妻橋を渡ったか何《なん》だか分りそうなものだ」
 駕「渡ったつもりでございますがね、今夜は何だか変な晩で、何《ど》うも、変で、なア棒組、変だなア」
 駕「些《ち》ッとも足が運べねえ様だな」
 駕「妙ですねえ旦那」
 新「妙だってお前達《めえたち》は訝《おか》しいぜ、何《ど》うかして居るぜ急いで遣《や》ってくんねえ、小塚ッ原などへ来て仕様がねえ、千住へでも泊るから本宿《ほんじゅく》まで遣っておく
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