、心安立《こゝろやすだて》が過ぎてお前さんを打《ぶ》った事も有りましたが、誠に済まない事を致しました、私はもう死にますから此の事だけお知らせ申して死度《しにた》いと思い、殊《こと》にお前さんは親類《みより》縁者《たより》は無いけれども、たゞ新五郎様と云う御惣領《ごそうりょう》の若様が有ったが、今居れば三十八九になったろうけれども行方知れず覚えて居て下さい、鼻の高い色の白い好《い》い男子《おとこ》だ、目の下に大きな黒痣《ほくろ》が有ったよ、其の方に逢うにも、お前さんがこの迷子札を証拠に云えば知れます、アヽもう何も云う事は有りませんが、唯《たゞ》馬鹿野郎などと悪態を吐《つ》きました事は何卒《どうぞ》真平《まっぴら》御免なすって、仏壇《ほとけさま》にお前様《まえさん》の親父様《おとッつぁま》の位牌《いはい》を小さくして飾って有ります、新光院《しんこういん》様と云って其の戒名だけ覚えて居ります、其の位牌を持って往って下さい」

        三十五

 新「然《そ》うかい、私は初めて伯父さん聞いたがねえ、だがねえ、私が旗下の二男でも、家が潰れて三歳《みっつ》の時から育てゝくれゝば親よりは大事
前へ 次へ
全520ページ中188ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング