て来て源三郎とおこよと云う女太夫を引攫《ひっさら》って逃げようとする、遣《や》るめえとする、争って鎗で突かれて親父様はお逝去《かくれ》だから、お家は改易になり、座光寺の家も潰《つぶ》れたがね、其の時にお熊は何《なん》でもお胤《たね》を孕《はら》んで居たがね、屋敷は潰れたから、仕方がねえので深川へ引取《ひきとり》、跡は御家督《ごかとく》もねえお前さんばかり、ちょうどお前が三歳《みっつ》の時だが、私が下谷大門町へ連れて来て貰い乳して丹精して育てたのさ、手前《てめえ》の親父《おやじ》や母親《おふくろ》は小さいうち死んで、己《おれ》が育てたと云って、刻煙草《きざみたばこ》をする中で丹精して、本石町四丁目の松田と云う貸本屋へ奉公に遣りましたが実は、己はお前の処に居た門番の勘藏と申す、旧来御恩を頂いた者で、家来で居ながら、お前さんはお旗下の若様だと※[#「救/心」、144−12]《なまじ》い若い人に知らせると、己は世が世なら殿様だが、と自暴《やけ》になって道楽をされると困るから、新吉々々と使い廻して、馬鹿野郎、間抜野郎と、御主人様の若様に悪たい吐《つ》いて、実の伯父甥の様にしてお前さんを育てたから
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