さア此方《こちら》へ」
 新「ヘエ何《ど》うも誠に久しく御無沙汰致しました、御機嫌宜しゅう、田舎へ引込《ひきこ》みましてからは手紙ばかりが頼りで、頓《とん》と出る事も出来ません、養子の身の上でございますからな、此の度《たび》は伯父が大病でございまして、さぞお長屋の衆の御厄介だろうと思い実は彼方《あちら》の兄とも申し暮しておりました、急いで参る積《つもり》でございますが何分にも道路《みち》が悪うございまして、捗取《はかど》りませんで遅う成りました」
 男「何《ど》う致しまして、大層お見違え申す様に立派にお成りなすって、お噂ばかりでね、伯父さんも悦んでね、彼《あれ》も身が定まり、田舎だけれども良い処へ縁付《かたづ》き、子供も出来たってお噂ばかりして、実に何うも一番古くお長屋にお住いなさるから、看病だって届かぬながら、お長屋の者が替り/\来て見ても、あゝ云う気性だから、お前さんばかり案じて、能《よ》くマア早くお出《いで》なすった、さア此方《こっち》へ」
 新「ヘエ、是はお婆さん、其の後《ご》は御無沙汰致しました」
 婆「おやまア誠に暫《しばら》く、まア、めっきり尤《もっとも》らしくおなりなす
前へ 次へ
全520ページ中179ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング