アさんが二人来て麦搗唄《むぎつきうた》を唄います。「目出度《めでた》いものは芋《いも》の種」と申す文句でございます。「目出度いものは芋の種葉広く茎長く子供|夥多《あまた》にエヽ」と詰らん唄で、それを婆アさんが二人並んで大きな声で唄い、目出度《めでたく》祝《しゅく》して帰る。これから新吉が花婿の床入《とこいり》になる。ところが何時《いつ》までたっても嫁お累が出て来ませんので、極りが悪いから嫌われたかと思いまして、
新「もう来そうなもの」
と見ると屏風《びょうぶ》の外に行燈《あんどう》が有ります。その行燈の側に、欝《ふさ》いで向《むこう》を向いて居るから、
新「何《なん》だね、其処《そこ》に居るのかえ、冗談じゃアない、極りが悪いねえ、何《ど》うしたのだえ、間が悪いね、其処に引込《ひっこ》んで居ては極りが悪い、此方《こっち》へ来て、よう、私は来たばかりで極りが悪い、お前ばかり便《たよ》りに思うのに、初めてじゃアなし、法蔵寺で逢って知って居るから、先刻《さっき》お前さんが白い綿帽子を冠《かぶ》って居たが、田舎は堅いと思って、顔を見度《みた》いと思っても、綿を冠って居るから顔も見られず、間
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