な「有体ッたって別に無《ね》えだ、墓参りに行って年頃二十二三になる好《い》い男が来て居て、お前《めえ》さん何処《どこ》の者だと云ったら江戸の者だと云って、近処《きんじょ》に居る者だがお墓参りして無尽|鬮引《くじびき》の呪《まじね》えにするって、エー、雨降って来たから傘借りてお累さんと二人手え引きながら帰《けえ》って来て、お累さんが云うにゃア、おせな彼様《あん》な好《い》い男は無《ね》いやア、彼様な柔《やさ》しげな人はねえ、己《おれ》がに亭主《ていし》を持たせるなれば彼《あ》ア云う人を亭主に持度《もちた》いと云って、内所で云う事が有ったけえ、其の中《うち》に火傷してからもう駄目だ彼《あ》の人に逢いたくもこんな顔になっては駄目だって、それから飯も喰えねえだ」
 三「然《そ》うか何《ど》うも訝《おか》しいと思った、様子がナ、汝《てめえ》に云われて漸《ようや》く分った」
 せな「あれ、横着者め、お累様云わねえのか」
 三「なにお累が云うものか」
 せな「彼《あれ》だアもの、累も云ったから汝《てめえ》も云えってえ、己に云わして己云ったで事が分ったてえ、そんな事があるもんだ」
 三「騒々しい、早く
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