》と云うくらいの人、此の上方者が家主《いえぬし》の処へ参りまして、
上「ヘイ今日は、お早うござります」
家主女房「おや、お出《いで》なさい何か御用かえ」
上「ヘエ今日は、旦那はんはお留守でござりますか、ヘエ、それは何方《どちら》へ、左様でござりますか、実はなア私《わたくし》は昨夜盗賊に出逢いましたによって、お届《とゞけ》をしようと思いましたが、何分《なにぶん》届をするのは心配でナア、世間へ知れてはよくあるまいから、どうもナア、その荷物が出さえすればよいと思うて居りました、実は私の嬶《かゝ》の妹《いもと》がお屋敷奉公をしたところが、奥さんの気に入られて、お暇を戴く時に途方もない結構な物を品々戴いて、葛籠に一杯あるを、何処《どこ》か行く処の定まるまで預かってくれえというのを預けられて、家《うち》に置くと、盗賊に出逢うて、その葛籠が無くなったによって、私はえらい心配を致しまして、もし、これからその義理ある妹へ何《ど》うしようと、実は嬶に相談して居りますると、秋葉の傍《わき》に葛籠を捨てゝ有りますから、あれを引取って参りとうござりますが、旦那はんが居やはらんければ、引取られぬでござりまし
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