《さしにな》いで」
新「万一にも此の事が世間へ流布してはならぬから貴様に頼むのだ、若し脊負えぬと云えばよんどころない貴様も斬らんければならぬ」
三「エヽ脊負います/\」
と云うので十両貰いました。只今では何《なん》でもございませんが、其の頃十両と申すと中々|大《たい》した金でございますから、死人を脊負って三右衞門がこの屋敷を出るは出ましたが、何《ど》うしても是を棄てる事が出来ません、と申すは、臆病でございますから少し淋しい処を歩くと云うと、死人が脊中に有る事を思い出して身の毛が立つ程こわいから、なるたけ賑《にぎ》やかな処ばかり歩いて居るから、何うしても棄てる事が出来ません、其の中《うち》に何処《どこ》へ棄てたか葛籠を棄てゝ三右衞門は下総の在所へ帰って仕舞うと、根津七軒町の喜連川《きつれがわ》様のお屋敷の手前に、秋葉《あきは》の原があって、その原の側《わき》に自身番がござります。それから附いて廻って四五間参りますると、幅広の路次《ろじ》がありまして、その裏に住《すま》って居りまするのは上方《かみがた》の人でござりますが、此の人は長屋中でも狡猾者《こうかつもの》の大慾張《だいよくばり
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