せん娘で、
娘「あッ」
と飛び退《の》いて新吉の手へすがりつくと、新吉も恟《びっく》りしたが、蛇はまた元の様に、墓の周囲《まわり》を廻って草の茂りし間へ這入りました。娘は怖いと思いましたから、思わず知らず飛退《とびの》く機《はず》みで、新吉の手へ縋《すが》りましたが、蛇が居なくなりましたから手を放せばよいのだが、其の手が何時迄《いつまで》も放れません。思い内に有れば色外に顕《あら》われて、ジロリ、と互《たがい》に横眼で見合いながら、ニヤリと笑う情《じょう》と云うものは、何《なん》とも申されません。女中は何も知りませんから、
下女「お前さん、在郷の人には珍らしい人だ、些《ちっ》とまた遊びに来て、何処《どこ》に居るだえ、エヽ甚藏が処《とこ》に、彼《あ》の野郎評判の悪《わり》い奴で、彼処《あすこ》に、そうかえ些と遊びにお出でなさえ、嬢様お屋敷奉公に江戸へ行ってゝ、此の頃|帰《けえ》っても友達がねえで、話《はなし》しても言葉が分んねえてエ、食物《くいもの》が違って淋しくってなんねえテ、長く屋敷奉公したから種々《いろ/\》な芸事がある、三味《さみ》イおっ引《ぴい》たり、それに本や錦絵がある
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